The Economist(以下、エコノミスト)はイギリスの週刊新聞です。日本では読売新聞と提携しています。1843年にスコットランドの経済学者であるジェイムズ・ウィルソン によって創刊されました。ロンドンに所在するThe Economist Groupから発行されています。親会社の筆頭株主はエクソール。フィアット創業家として知られるアニェッリ家が支配する投資持株会社です。それではエコノミストが発表するランキングについて解説します。
エコノミストのMBAランキングは客観指標型のランキング
MBAランキングは数多く出されており、①フィナンシャルタイム、②ビジネスウィーク、③フォーブス、④US ニュース&ワールドレポート、⑤エコノミスト等のメディア系が調査するランキングと、⑥Eduniversal、⑦QS World Rankings、⑧Times Higher Educationの8つが主なものです。これらの調査を2つに分けるとすると、主観指標型と客観指標型に分かれます。エコノミストのMBAランキングは 、客観指標を用いたFact-based型のです。
エコノミストのMBAランキングの評価基準は「教育の質」を重視
エコノミストの2021年度のランキング 評価基準は以下の通りです。
評価基準は33個に細分化されたカテゴリーからランキングを作成しています。改めてみると、各大学院にとってエコノミストのランキングにエントリーするのは大変です。そもそもエントリーできる事務局体制(費用)がある大規模なビジネススクールしか参加することができないのが実情です。
1 新しいキャリアの機会を提供する(35%配点)
1.1 採用企業の多様性
1.2 就職活動中の卒業生のうち、卒業後3カ月以内に内定を得た人の割合
1.3 キャリアサービスに対する卒業生の評価
2 自己啓発と教育経験 (35%配点)
2.1 教員の質:教員と学生の比率、博士号を取得した専任教員の割合、教員の学生/卒業生の評価(5段階中)
2.2 学生の質:平均GMATスコア、平均実務経験年数、MBA取得前の給与
2.3 学生/教員の多様性:学生の地理的多様性スコア、学生の性別多様性スコア、文化とクラスメートの学生による評価、教員の性別多様性スコア
2.4 教育経験:プログラムコンテンツの学生/卒業生の評価、 海外研修、提供されている言語の数、施設の学生/卒業生の評価
3 給与 (20%配点)
3.1 MBA取得後の給与
3.2 給与の上昇率
4 ネットワーク構築の可能性 (10%配点)
4.1 卒業生と現役学生の比率 :
4.2 海外のMBA同窓会支部の数 :
4.3 卒業生による同窓会の効果の評価 :
さて 評価基準 を見ると分かるのが「教育の質」の配点が多いことです。換言すると学生の「経験価値」に重きを置いて採点しています。特に自己啓発と教育経験が最大の配点となっています。その内容は教員と学生の質や多様性におかれています。どれだけいろんな仲間に出会えるか?という点を重視しています。加えてキャリア機会が充実しています。給与という直裁的な評価基準よりも高いところを見るとビジネススクールの役割についても考えさせられます。
エコノミストのフルタイムMBA部門のランキング1位は「IESE ビジネススクール」
Full-time MBA Ranking 2021
2021年、エコノミストは上位90校のリストのみを公開しています。全部で165の学校が参加するよう招待されました。残りの75は掲載されていません。またランキングには米国のトップスクールであるHarvard, Stanford, Chicago Booth, Wharton, MIT Sloan, Kellogg, Columbiaの名前がありません。コロナ禍による影響でボイコットしたそうです。従って以下の表の右側のRank Changeに大きな変動、特に上昇が見られていることが2021年の特徴です。
2021年とトップはIESE Business Schoolでした。スペイン発祥の世界トップランクのビジネススクールで、バルセロナ、マドリード、ニューヨーク、ミュンヘン、サンパウロにキャンパスを展開しています。日本では六本木にオフィスがあるのでお話を聞いてみてもいいかのかもしれません。
Rank | Business School | Band Overall | Country | Score | Rank Change |
---|---|---|---|---|---|
1 | IESE Business School | A | Spain | +9 | |
2 | HEC Paris Business School | A | France | +1 | |
3 | University of Michigan – Stephen M. Ross School of Business | A | United States | +6 | |
4 | New York University – Leonard N Stern School of Business | A | United States | +13 | |
5 | Georgia Institute of Technology – Scheller College of Business | B | United States | +18 | |
6 | SDA Bocconi – School of Management | B | Italy | +7 | |
7 | EDHEC Business School | B | France | +25 | |
8 | University of Washington – Foster School of Business | B | United States | +12 | |
9 | Carnegie Mellon University – The Tepper School of Business | B | United States | +22 | |
10 | IMD – International Institute for Management Development | B | Switzerland | +25 |
なお、IESE ビジネススクールのMBAプログラムの学生数は1学年 350人、エグゼクティブMBAプログラムは300人なのである程度の規模感があります。上記にも示したとおり、エコノミストにエントリーすると言うことは「安定的な学校運営ができる体制が整っている」ことが事実上の前提条件になります。
過去の圧倒的1位は「シカゴ大学-ブースビジネススクール」
コロナ禍前のランキングを見ると「シカゴ大学-ブースビジネススクール」が1位です。世界から高い評価を得ているビジネススクールです。2010年~2019年の10年間で8回1位、2回2位という圧倒的な実力校です。卒業生もすごいメンバーですね。日本からも優秀な経営者を多く輩出しています。
サティア・ナデラ(1997): マイクロソフトCEO
デービッド・ウェルズ(1998): 元NetflixCFO
ファルハン・シディキ(2007): マクドナルドGlobal Chief Digital Officer
マット・マロニー(2010): グラブハブ社長兼CEO
ジェームズ・O・マッキンゼー: マッキンゼー・アンド・カンパニー創設者
2020 |
No date |
2019 |
1シカゴ大学-ブースビジネススクール |
2ハーバードビジネススクール |
3HECパリビジネススクール |
4ノースウェスタン大学-ケロッグ経営大学院 |
5ペンシルベニア大学-ウォートンスクール |
2018 |
1シカゴ大学-ブースビジネススクール |
2ノースウェスタン大学-ケロッグ経営大学院 |
3ハーバードビジネススクール |
4ペンシルベニア大学-ウォートンスクール |
5スタンフォード大学-ビジネス大学院 |
日本の大学でランクインしているのは新潟にある「国際大学 International University of Japan」
日本の大学でランクイン(73位)しているのは国際大学でした。特に「新しいキャリアの機会を開く」の評価点が高く世界ランキングでも10位に入っていました。新潟県に所在するMBAのキャリア機会が注目を浴びています。写真は最寄り駅であるJR浦佐駅からの景色です。新潟の里山からの世界エントリー、本当に嬉しいですね。

https://whichmba.economist.com/ranking/full-time-mba/2021/international-university-of-japan
エコノミストのランキングはホームページで公表
エコノミストのランキングはホームページで公表されています。インジケータを使用すると以下の採点基準毎のランキングも確認することが可能です。自分の重視する基準で並び替えるととても興味深い結果を得ることができます。
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